「量産型大学生」というファッション用語
「量産型大学生」という用語、どこかで耳にしたことのある方も多いと思います。
男女の区別がつかない「大学生」という表現を避けて、「量産型女子大生」や「量産型男子大学生」みたいな語が使われていることもあるようですが、基本はいっしょです。
こんな画像、見たことありませんか?
※参考画像(すがちゃんねる)
女子大生バージョンだと、こんな画像も「量産型」として話題を呼びました。
※参考画像(NAVERまとめ)
こういった画像とともに広まった「量産型大学生」という用語。服装や髪型といった、いわゆる「見た目」に関わるポイントを引き合いに出しつつ、個性のなさを揶揄する言葉として広まりました。
よくある「量産型大学生」のファッションを、画像と一緒に列挙しながら確認しておきますね。
(1) ベージュパンツ+ブルーシャツ
※参考画像(すがちゃんねる)
「量産型大学生」という言葉が男性に関して使われるようになった時に、筆者が一番初めに見た画像はこれでした。「量産型大学生オリジナル画像」とでも言えると思います。
ブルーのシャツにベージュのチノパン。今でも頻繁に見かけるコーディネートですし、おそらく雑誌を読んでもよくオススメされているコーディネートだと思います。
(2) チェスターコート+スキニー+ニット帽
※参考画像(大学生のゴミラジオ)
なんか強い悪意を感じるイラストですが…苦笑
この画像はけっこう最近のものだと思います。少なくともここ2年くらいで登場したのではないかな。というのも、ここで描かれている(緑かどうかは置いといて)「チェスターコート」は、ここ3〜4年の流行コートだからです。もちろん流行に敏感な方々は5年前くらいから着ていましたが、それが「量産化」されるまでにはもう少し時間がかかった印象です。
(3) ボーダーカットソー
※参考画像(NAVERまとめ)
最後はもう少し前。筆者が学部生だったので、おそらく2011年とか2012年くらいではないかな。ボーダーのTシャツ・カットソーが流行しだしたのが2010年ごろだったと思います。シンプルでありながら、色使いなどで差をつける!といったキャッチコピーで、少し長めの(革紐の)ネックレスとセットで流行していた気がします。
さて、なんとなくのイメージは掴んでいただけたのではないかと思います。
大事なのは、「このアイテム以外は量産型ではない」とか、逆に「これを着ていたら確実に量産型」などという厳密な定義みたいなものは存在しない、ということです。
二つ目のイラストなんかがわかりやすいですね。いろんな特徴を列挙してくれていますが、例えばこの画像のスタイルからニット帽を外してみたり、メガネをコンタクトレンズに変えたとしても、やっぱり量産型は量産型です。
「だいたいこんなのが典型的な量産型大学生」といった程度の、ゆるい理解で読み進めてもらえると嬉しいです。
「量産型大学生」という言葉に込められた意味
「量産型」といえば「ザク」
※参考画像(amazon)
『機動戦士ガンダム』を中心とした、いわゆる「ガンダムシリーズ」に登場するモビルスーツ、ザク。「量産型」という言葉を聞いて、まずこの機体を思い出す人も多いはずです。
そしてこの「ザク」、あまりにも有名な逸話ですが、その名前の由来は「雑魚(ザコ)」。
名称は「雑魚」と、軍隊の「ザクッザクッ」といういわゆる軍靴の音を組み合わせたもの
出典:Wikipedia
どうしても、主人公の乗るガンダムにやられてしまうイメージが強い機体ですよね。
また、ザクにまつわるセリフとして、「ザクとは違うのだよ、ザクとは」(by ランバ・ラル with グフ)を思い出す方もおられるでしょう。さすが「雑魚」由来の機体です。
※参考画像(fc2 blog)
さらに、「赤い彗星」と呼ばれたシャアの専用ザク、いわゆる「シャア専用ザク」に、「ザクなのに!」とハラハラ感を抱いた方も多かったのではないでしょうか。個人的にはシャアの専用機だとゲルググの方が好きだったりするのですが、どうでも良いです。
書いていて楽しくなってきちゃいそうなので、ちゃんと話を戻しましょう。
ザクです。量産型ザクのお話です。
こういった諸々の「雑魚」としての特徴が描かれたおかげで、「量産型」というと「なんかザコい」というイメージが定着してしまっているのは確かでしょう。(シャア以外の)パイロットを含めて、溢れ出る「モブキャラ」感。
「量産型大学生」という言葉には、こういった「モブキャラ」感を中心とした、とてもネガティブなニュアンスが含まれています。
実際グーグルなどで「量産型大学生」と検索してみても、検索結果の多くは
「個性がない!?量産型大学生とは」
「脱・量産型大学生!周りに差をつけよう」
みたいな記事です。
「量産型大学生」は「ダサい」というイメージ
このように、「量産型大学生になるのは悪いことだ」というイメージは、言葉のニュアンスもあいまって、根強くあります。
というか、ほぼほぼ「量産型大学生=ダサい」というイメージが定着していると言っても良いでしょう。「お前、量産型大学生っぽいよ」と言われたら、それは「ダサい」と言われているに等しいと思います。
ただ、これから詳しく見ていきますが、筆者はこの「量産型大学生=ダサい」という理解は、一理あるものの、常にネガティブに受け取る必要はないと思っています。
量産型は「無個性」
先ほど「モブキャラ」という言葉で説明した通り、「量産型大学生」という言葉は「無個性」というニュアンスを強く含んでいます。
つまり、「頻繁に見かける。面白み・オリジナリティに欠ける」ということです。
この見方、決して間違ってはいないでしょう。上の「量産型大学生」の典型的な画像でも見てもらった通り、彼らの服装や見た目に「個性」や「オリジナリティ」を感じるのは難しいと思います。アイドルグループを見ていて「みんな同じ顔に見える」という人がいますよね。感覚としてはあれと同じ感覚でしょう。
ここで重要なことは、
決して、「アイテムがダサい」と言われているわけではない
ということです。ダサいんじゃないんです。個性がなくて面白味に欠けるだけ。
「女子受けファッション」を見てみると、正直ほぼ「量産型」
落ち着いたベーシックなアイテムを好む傾向
ここで少し「量産型大学生」から離れて、その対極に置かれている(ように見える)、「女子受けファッション」について見てみましょう。
ここで「女子受けファッション」に注目するのは、一般に「女子受けファッション」と呼ばれている服装が、意外なまでに(その対極とされている)「量産型大学生」や「量産型ファッション」とよく似ているからです。
「女子受けファッション」でググってみると、出てくるアイテムはだいたい次のような感じになっています。
- 白シャツ
- シンプルなTシャツ・カットソー
- 黒スキニー・細身の濃紺ジーンズ
- 細身のスラックス
- カーディガン
- テーラードジャケット
「女子受け」といっても一枚岩ではないので、例えば「スキニー」に対しては「細さが際立ちすぎて嫌い。女子より細い人がいて困る」などという声も聞かれます。ですが「メンズファッション・初心者」といったワードでググるとやっぱり「黒スキニー」と書いてあるので、基本的には「女子受けファッション」に数え入れて良いはずです。
さて、上で挙げたようなアイテムだけでコーディネートを作った場合には、どんな見た目の人ができあがるでしょうか?
あんまり考えるまでもなく、そんなに個性のある人はできあがらないでしょう。
実際にGoogleで画像検索をかけてみると、こんな感じ。
ね?「なんじゃこりゃ!超オシャレ!」みたいに見える服装じゃないでしょ?
ガンダムやシャア専用ザクみたいな、「やべぇ、カッコイイ!」じゃないんです。ポイントをおさえて上手にコピーさえすれば、いつでも量産化可能。ザクみたいなもんです。
体型や髪型(そしてもちろん顔)によほどの個性がある場合を除いて、つまりほとんどの人にとって、上のようなアイテムを使って「個性的なコーディネート」を作るのは難しいはずです。
「女子受け」は「派手・個性的」ではなく「ベーシック」
ここからわかることは、
「女子受けファッション」で求められているのは、「個性を存分に発揮する目立つ(派手な)コーディネート」ではなく、「ベーシックで悪目立ちしないコーディネート」である
ということです。
よく、男性(彼氏)に求めるファッションとして、「ダサくなければ…」とか、むしろ「オシャレすぎるとちょっとね…」といったコメントを見かけるのは、こういった事情によるところが大きいのでしょう。
つまるところ、(良い悪いは別として)奇抜な色使いや派手な柄といった「目立つ」ファッションはあまり好かれないと思って良いのでしょう。
さらに強い言葉を使ってしまうとすれば、「女子受けファッション」とは、ほとんど「量産型ファッション」である、あるいは、「いつでも量産化できるファッション」であると言ってしまえると思います。
「量産型=ダサい」という固定観念があることは否定できない事実ですが、「ダサくない」の代名詞と言えるはずの「女子受けファッション」はほとんど「量産型」なんです。
「女子受け」のために求められていること
ここまで見てきたことをまとめてみましょう。
- 「女子受けファッション」はベーシックなアイテムで作られている
- 「女子受け」のアイテムだけで出来上がるコーディネートは「ほぼ量産型」
これを踏まえると、「じゃあ量産型でいいじゃん」と思われると思います。「量産型=ダサい」という固定観念が実は間違っていて、「量産型=女子受け」が実は正解なんでしょ?ということになりそうですよね。
「アイテム選び」は「量産型」で良い。勝負は「着こなし」
この考え方は、9割方正解だと思って良いです。ほぼほぼ正解。
でも、「9割方」とか「ほぼほぼ」という留保をつけているのには理由があります。
その「9割方正解」と、残りの「1割方不正解」なところをそれぞれ見ておきましょう。
まず、「9割方正解」の方から。
この正解はズバリ、アイテム選びです。
上で見た通り、「女子受けファッション」は、いつ「量産型」と呼ばれて初めてもおかしくないくらい、ベーシックでシンプル。ユニクロや無印といった比較的安価なお店でも購入できるものがほとんどです。
つまり、アイテム選びという点から見る限り、「量産型」(あるいは「量産型予備軍」とでも言える)になるのは、決して間違いではないはずです。
なので「量産型なアイテム選び=女子受けファッション」は正解。
では、「量産型=ダサい」はどこから生まれるのか。何が「1割方」の不正解なのか。
筆者が思うに、それは端的に「着こなし」です。
「着こなし」には、サイズ感やアイテムの組み合わせ方、着て行く場所(デートなのか大学なのかバイトなのか)に合わせているかどうか、といった様々な要素が含まれています。もちろん、「顔」や「髪型」、「スタイル」もそこに含まれます。
ここで、上で挙げたベージュパンツ+青シャツの画像をもう一度見てみましょう。
「サイズ感」に注目して見てください。筆者に言わせれば左から2番目の、少し鮮やかなブルーのシャツを着ている彼を除いて、全員オーバーサイズです。もう1サイズくらい下げて良い。一番右の彼の、シャツはギリOKでしょう。パンツは長すぎ&ちょっと太いと思いますが。
左から2番目の彼はガタイが大きいこともあって、他の4人と同じアイテムでも、ジャストサイズで一番上手に着こなせています。なかなか意地悪な質問ですが、「この5人の中で1人オシャレだと思う人を選んでください」と言われたら、多くの人がこの彼を選ぶでしょう。筆者の感覚では、7割が左から2番目、残りの3割が一番右だと思います。
つまり、「量産型アイテム選び=女子受けファッション」であってそれ自体には全然問題はないのに、そのアイテムの「着こなし」を考えず、「アイテム選び」だけで満足してしまった結果が、「量産型=ダサい」の理由なんです。
これは筆者の体験談ですが、筆者がファッションに目覚めてから、一番最初に女性に「(筆者)くん、今日オシャレだね」と言われた時のコーディネートは、まさにベージュパンツと青シャツでした。大学の食堂で、ぼっち飯をしていたら、同じ大テーブルに筆者の女友達(+その友達1人)が座って、相席っぽい感じになった時でした。その後その友達とは何があったわけでもないんですが、「初めてオシャレって言われた!!!」と超感動したので、いまだに覚えています。
幸いなことにその頃の筆者は(友人にお助けマンをお願いしつつ)、自分のジャストサイズをちゃんと見つけられるようになっていました。なのでさすがに上の画像のオーバーサイズな彼らほどには、ダボダボ感&だらしなさを印象付けることはなかったと思います。
オシャレ度の判断基準:ベーシックなアイテムをどれだけ着こなせているか
ここまでを読んでいただければ、なんとなくイメージがつくのではないかと思いますが、「女子受けファッション」と「量産型大学生」とを比べてみてわかることは、
ベーシックなアイテムを着こなせている人がオシャレ。ベーシックなだけで着こなせていない人は「量産型」
と判断されることが多い、ということです。
昔、メガネ屋さんのZoffが、ポスターのキャッチコピーで次のようなセリフを使っていたことがあります。
あなたのあだ名が「メガネ」なのは、そのメガネが似合っていないからです。
筆者がここで言いたいことを、コンパクトかつ完璧に、言い表していると思います。
メガネなんて、ありふれたアイテムです。それこそ「量産型」アイテムです。
でも、それが「似合って(=着こなせて)」いる限り、メガネをかけたその人は「オシャレな人」であって、「メガネ君(=量産型大学生)」にはなりません。似合っていないからこそ、「メガネ君(=量産型大学生)」なんです。
「量産型大学生=ダサい」という固定観念の原因は、「個性の無さ」より何より、「量産化されるレベルにベーシックで着こなしが求められるアイテム・組み合わせなのに、意外なまでにそれを着こなせている人が少ない」ところにあります。
繰り返しますが、「量産型のアイテム選び」は正直言って、全然間違っていません。特に量産化されるだけあって、誰でもちゃんと選べば着こなすことのできる普遍的なアイテムです。「女子受けファッション」にも通じるものがあります(というかほぼほぼ同じです)。
問題は、「サイズ感」を中心とした「着こなし方」。
そこさえクリアすれば、いかに量産型大学生とよく似たアイテムを選んでいたとしても、あなたは「量産型大学生」とは一線を画した、れっきとした「オシャレさん」になるでしょう。
「着こなし」を学ぶ
最後に、「着こなし」について、関連する記事を少し紹介して終わろうと思います。アイテム選びについては、まずは「定番」を選んでおけば間違いありません。上でも述べた通り、勝負は「ベーシックなアイテムをどれだけ着こなせるか」です。
上でも書いた通り、「着こなし」で一番重要になるのが「サイズ」。
3連記事を書いたので、それぞれ参考にしてください。
最後に、「女子受け」という点で、以前似たような記事を書いたことがあります。「理想の彼氏」というイラストからメンズファッションのあり方を考えた記事です。こちらも参考にしてみてください。